疑心暗鬼も鬼のうち?
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 



今年の節分は2月3日の日曜日、恵方は南々東…というの、
どのくらい、テレビじゃネットじゃで目にされましたか?
節分というと、という話題は
ともすれば一月末の最終週から当日まで…というほどに、
扱われるスパンも随分と短いような気がしてならずで。

 「近間のスーパーやコンビニのチラシでなら、
  恵方巻きとやらが結構大きく扱われていますが、
  それにしたって前日から当日までですものね。」

寿司といえば、当日中にお召し上がりください食品の筆頭で、
お総菜部門の中でも究極の“生まもの”ですしねぇと。
それなりに自炊しつつも
ついついお世話になる機会が多いからこその“事情通”たちが、
やれやれだなぁという気色の苦笑をこぼし合う。

 「そのあと速攻でやってくる聖バレンタインデーのほうが、
  華やかですし、景気への影響やら効果やらも大きいのでしょうが。」

昨今では、女性に人気のジャンルやお商売が元気だと景気もいいとか。
それでの扱いの差では?と、
窓辺に据えられたサーバーで淹れ直したコーヒーを、
“どうぞ”とデスクまで運んで差し上げれば、

 「どっちも本番当日は1日だけなんだがな。」

それに、豆まきも恵方巻きも
今時の“ウチナカ”向けのイベントだろうになぁと。
それを蔑ろにするとは嘆かわしいと言いたげな語調となった相手へ、

 「ウチナカは あくまでも“家庭”あっての段取りでしょう。」

何で俺、今時の“二月といや聖バレンタインデー派”の
肩を持ってるのかなぁと感じつつ。
出来るだけ和やかな言いようで宥めようとしたものの、

 「大晦日に 年越蕎麦より
  カウントダウンとやらを優先するようなものか。」

あれか、七五三よりハロウィンの方が持て囃されてるようなもんかと、
精悍知的な目許を少々眇目気味に構えてのこと、
まだまだ食い下がって見せる上司様だったりし。
やくたいもないことへの この執拗なお言いようなのへ、
こちらも今頃“はてな”と何かしらを感じ取り、

 「…勘兵衛様。本当に言いたいことが何かおありで?」

こちらもまた、ちろりんと斜に構えて訊いたのが佐伯刑事だと来れば。
頬杖しかかっていた持ち重りしそうな大きな手の上から
男臭いお顔を浮かせると、
そのまま手持ち無沙汰に顎のお髭を撫でている、
もう片やの殿方が、どこの“勘兵衛様”かも…明白ですよね?(苦笑)
それが彼より上の階級におわす誰か様が相手ならともかく、
信頼を寄せる顔触ればかりな部下の中でもダントツに、
気の置けぬ存在でもあろう征樹殿が相手だというに。
どこの頑固頑迷な年寄りかと思わせるよな、
理屈っぽい駄々のこねようをするとは、何とも彼らしくない所業。

  ……というか

年をまたいで関わっていた事件にようやっと鳧がつき、
書類全般、検察へ送ってしまったばかりの、
捜査一課強行係 島田班であり。
そんな状況下にあり、誰に遠慮もなく気を抜けるとあって、
何かしら甘えたいモードに入った彼だったらしい

  ……というのが 拾える呼吸であったりするのを

 “おシチちゃんに斜めに知られたら、
  微妙に恨まれるかも知れんのだがなぁ。”

こちらは向かい側に当たるデスクの縁へ、
腰を当てての凭れる格好で立ったまま。
口元へと持ち上げたマグカップの陰で、
複雑そうな苦笑を咬み殺す、佐伯刑事だったりし。
此処に当の彼女がおれば、
見栄だか虚勢だかを張ってでも、
甘えたり凭れたりはしない勘兵衛ではなかろうか。
いやいや、
そんな風に思うのもまた、
僭越が過ぎて、角が立つんじゃなかろうか。

 「…………。」
 「何だ、また何かややこしい考えごとか?」

彼らの双方をよくよく知っておればこそ、
中途半端な浅慮も出来ず。
かといって、差し出がましいお節介というのも、
遠い過去の生涯から想いを引き継いだそのまんま、
二世に渡って勘兵衛様大好きな七郎次だと知っているからこそ。
下手に気を利かせ過ぎれば、それはそれで、
健気で一途な七郎次お嬢様には 悪いのじゃあないかと、
それこそ勘兵衛に代わって気を揉んでいるのにね。

 「〜〜〜〜〜。」
 「どうした?」

人の気も知らないでとか、
そういや、このところの自分の煩悶ってこればっかじゃないかとか、
メールくらいはそろそろご自分で見るようにしてほしいとか、

 言いたいことは山ほどあるが、
 突き詰めれば…そのどれもが勝手に気を遣っているだけ。
 それに、

 “こっちのもやもや、実は全て判っているくせに、
  素っ途惚けている勘兵衛様なのかも知れないし。”

懐ろへ招き入れての気を許した相手へだって、
悪戯半分のだったり、余裕からだったりする“袖斗”を
こそりと隠し持っていたりする、
底の見えないお人なのも忘れちゃいけない。

 “そういうところは、相変わらずだしなぁ。”

いつまでも答えぬままというのも何なのでと。
戸惑う部下の煩悶を眺め、
口元を心持ち緩めておいでの御主様へ、

 「いえね、
  お嬢さんたちが鬼退治だ〜って
  どっかで張り切ってないかと思いまして。」

それはお転婆な令嬢たちによる、
十代の女子高生とは到底思えない破天荒に、
いいように振り回されてしまうという事態へは、
勘兵衛も自分も同じく火を消して回る側。
なのでと引き合いに出したところ、

  ああ、それなら…との速やかな応じ、

 「明日からだったか、期末考査が始まるから」

それはまずなかろうと、あっさり言ってから、

 「………いや、そういう時期だというのは通年のことで。」
 「わたしゃ何も言ってやしませんよ、勘兵衛様。」

何で知っているのだと問い詰められても、
しれっと言い抜けりゃあいいところ。
急に言い訳がましいお言いようの羅列を連ねるなんて、
何とまあまあ柄にないことをと。
意外な反応と驚くよりも、
なぁんだと妙に安堵してしまった征樹殿。
これもまた、気を抜いておいでゆえのほころびならば、
信頼されているのだ、素直に安んじておきましょと、
今度こそ、疑心や遠慮なきの心から
楽しげに微笑った佐伯さんだったらしいです。






    〜どさくさ・どっとはらい〜 13.02.03.


  *関西のみならず、
   恵方巻きとお吸い物という夕ごはんのお家が
   あふれている今宵だと思われますが。(こらこら)
   七つの福をからめ巻き取った海苔巻き食べて、
   炒り豆 撒いて厄払いして。
   どなた様も これからの一年、
   どうか健やかに過ごされますように。

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